石屋のないしょ話

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なぜお墓は石で作られているのか?

何年か前、ステンレスやセラミック製のお墓が新聞やテレビで話題になりましたが、人気がなくてすぐに消えてしまいました。日本人は「お墓は石で」という気持ちが強く、石以外は受け付けません。それは何故なのでしょうか?

日本人は神代の昔から「石」には霊力が宿ると考えてきました。日本には八百万の神々がいますから自然界のあらゆるものに霊が宿っていますが、「石」には特別な霊力があると思われていたのです。例えば「古事記」にはスサノヲの命が天照大神に身の潔白を明かす「誓約」のとき、天照大神の八尺の匂玉に息を吹きかけると五人の男神が生まれたという話があります。つまり匂玉は霊力がある石だったのです。

「日本書紀」大化二年の「薄葬令」には「王より以下、小智以上の墓は小さな石を用いよ」「庶民は土に埋葬せよ」とあります。しかし庶民も河原の丸い石を霊が宿る依り代にして埋葬地に置いた思われます。何故なら今でもその民族習慣が各地に残っているからです。

日本人が古代からお墓を死者の霊魂が宿る依り代の「石」で作るのは、「石」の霊力を信じる伝統があったからなのです。その伝統が一朝一夕に失われるものでないからこそ、二千年たった現在でもお墓は「石」で作られているのです。