石屋のないしょ話

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現代の石の道具について

石を用いた道具は、金属が道具の主材料になってからも続いて使われ、金属を加工するために用いられるなど、文明の進歩とともに新しい用途も出てきました。

石器時代の石皿の多くは平たい磨製石器で、塊状の食物などを叩いたり、押しつぶしたり、擂ったりして粉末にする道具ですが、くぼみが深い乳鉢型のものもあります。石臼とも呼ばれるこれらの石皿は、木製あるいは鉄製の臼とともに食物の調製をはじめ、鉱山で鉱石を粉砕するなど、目的に応じた石臼が工夫されて作られました。現在でも正月の餅つきや、穀物・陶磁器原料の粉砕などに石臼が用いられています。身近な石の道具に硯・碁石・灰皿などがあります。多くの硯は頁岩あるいは粘板岩ですが、中国の端渓石や山口県厚狭の赤間石は凝灰岩です。

碁石の白石はハマグリが用いられ、黒石は三重県産の珪質粘板岩(那智黒または那智石)が最上質とされています。那智黒は、試金石として金の純度の判定にも用いられます。銀や銅などと合金になっている金を試金石にすりつけてできる黄色の条痕は、硫酸をかけると銀や銅は溶けて金が残るので、標準品の条痕や溶け具合と比較して、金の純度を判定することができるのです。

印鑑の石質材料には、水晶・メノウなどが用いられています。筆記道具は情報伝達と記録の大切な道具で、古くには粘土板があり、石を用いた筆記方法として、粘板岩などの平らに剥がれやすい黒い岩石(石盤・石板)にロウ石やタルクなどの石筆で書く方法がありました。石筆という言葉は、江戸時代に西洋から渡米した鉛筆を意味していましたが、明治になって石盤が低年齢児の学習具として使われるようになってからは、石の筆記具のロウ石・タルクなどを指すようになりました。ロウ石は耐火物や陶磁器原料にもなる粘土質の軟らかい岩石です。石盤と石筆は、明治・大正から昭和の初めにかけて小学校などで広く用いられてました。