仏事Q&A

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形見わけには、どんないわれがあるのですか?

亡くなられた方が、普段使っていた品物や着ていた着物などを、身近な親しい人々に遺品として分けてあげることを『形見わけ』といい、葬儀が終わったあと、しばらくして落ち着いたところで行ないます。 形見わけは、いただいた品を手にするたびに、亡くなられた方のことを思い出して、その遺徳をしのび、生前に行なっていた立派な行いをまねて、少しでも善行をつむように務めようとする心をおこさせることと、遺産分配の一つの形式でもありました。

昔は着物には霊が宿ると考えられていて、着物の形見わけは重要な儀式の一つであったようです。 ことにお坊さんの間でお師匠様の衣を遺品としていただいた時は、師匠の教えを受け継いで守っていくという誓いを新たにするわけで、「衣鉢をつぐ」という言葉があります。 

また、形見わけは、亡き人の持ち物を分かち与えるということで、布施の功徳をつみ、その形見をもらった人にも同じように、自分の持っている品物を他に分かち与えようとする心をおこさせ、さらに物に対する執着心・貪欲の心を少しでもなくすようにするために行なうのが「形見わけ」です。 ある時お釈迦様が故郷の城に来られた時、実の子ラーフラは母のヤショダラにうながされて、お釈迦様に「われに家の財産を与えたまえ」と申し出ました。 お釈迦様は黙ってラーフラを弟子の舎利弗尊者の許に連れて行き出家させました。 「財産を与えて下さい」といった子に対して、お釈迦様は、教えという心の宝を与えて「法の後継」となるようにと諭されたのです。 お釈迦様の生まれた国は、やがて隣国に攻め滅ぼされました。 どんなに多くの財宝や地位・名誉があっても、必ず栄枯盛衰あって滅び去ってしまうものです。 すべて仮の相のものなのだから、それに囚われることなく、他人によって滅ぼすことも奪うこともできない“心の宝”を大事にし、それを分かち与えられたのです。 子供は親の生きている生き方を見て育っていきます。 「子は親の鏡」という言葉があるように、親子の仕草・考え方は似ています。 我が子に与える形見は、どんなものを残したらよいか、よく考えてみてはいかがでしょうか?

ご参考までに・・・。