- 仏事Q&A
「薬石効なく」って、どういう意味ですか?
長患いの後、その療養や家族の手厚い看護のかいもなく亡くなられたときに、よく「何某、薬石効なく・・・云々」と書かれていますが、薬石とは禅宗からでた言葉です。 仏教集団において、ことに現在でも南方仏教など、戒律を重んじている小乗教団においては、食事は十二時以降はしてはいけないことになっています。 ご承知のとおり、インドなど暑い国では色々の食べ物が混ざっていて腐敗しやすいので、午後までとっておいた食事は口にしてはいけないという衛生上から出た戒であり、またつねに満腹にしていては勉学修行が満足にできないということから、この定めが決められたのです。
この伝統がインドから中国に伝わってきて仏教教団の戒律となっていたのですが、中国においては正午までの食事を認めるものの、実際の日常生活においては午後から夕刻・晩にかけての修行、作務などを行っていく関係上、夕食を認めざるをえなくなってきました。 あくまでも表面上は正午以後の食事は戒律上認められないので、薬石(くすり)として夕食を食べていたのです。
禅宗の『黄檗清規』に、「薬石は晩食なり。 比丘・午を過ぐれば食せず。 故に晩食を薬石と名づけ、飢渇の病を療ぜんがためなり。」とあるのは、このことを指しています。 はじめに、晩は食事をしないことになっていたので、そのかわりにお腹に温かい石を抱いて飢えをしのぎ、身体を温めていました。 この石が薬石です。 後になって、お粥をたべるようになったのですが、この夕食のことを薬石と呼んで「飢渇の病」を癒していたものです。 現在では薬石は一般に薬剤の意味に用いられていますが、もともとは仏教用語からでたものなのです。
ご参考までに・・・。