仏事Q&A

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山盛りのご飯に箸を立てるのはなぜですか?

亡くなった方が生前使っていたご飯茶碗にご飯を山盛りにし、生前愛用していたお箸を真っ直ぐに立てて供えるのを「枕飯」といい、亡くなった方の枕元にすぐに団子を作って供えるのを「枕団子」といいます。 お団子は、お米を臼で挽いて作り、六つ盛ります。 一般的にこれは亡くなった方の冥土の旅のお弁当だといわれていますが、インドにおける「供餅祭」の風習が伝わっているともいわれています。 枕飯のついては、やはり親族の者が普段使う竃とは別に作った竃で炊き、炊いただけを親族が一人一人少しずつ盛り上げて「枕飯」を作ります。

この枕飯の由来について『大般涅槃経』に「東方の意楽美音浄土という仏土があり、そこの虚空等如来が弟子に向かって『西方の娑婆世界に釈迦牟尼如来という仏がおられ、まもなく般涅槃される。 お前はこの世界の香飯を持っていきなさい。 この飯は香美で、食べれば安穏になる。 かの世尊はこの香飯を食べてから般涅槃されるだろう』と。 その命をうけた無辺菩薩が娑婆世界に来て、釈迦牟尼世尊のところに至って、『我等の食を受けたまえ』と申し出た。 しかし如来は説きを知って黙念として受けられなかった」とあります。 無辺菩薩が香飯を差し上げようとしたのに、生前お受けにならなかったので、入滅されてすぐにお供えしました。 その風に従って死後すぐに枕飯を供えるのだという説があります。

もう一つは、『古事記』・『日本書紀』の神代の黄泉国のところで、死んで黄泉国にいった伊邪那美命に会いたいと、後を追っていった夫伊邪那岐命が「帰っておくれ」と語りかけるところがあります。 そのとき伊邪那美命は、「早く来てくださらなくて、大変に悔しい。 私はもう黄泉戸喫を食べてしまいました。」と答えます。

この「黄泉戸喫」は、黄泉国の竃で煮炊きしたものを食べることで、これを食べると死の国黄泉の国の者になりきって、生きていた国へは帰れないと信じられていました。 「枕飯」は、この「黄泉戸喫」にあたるもので、死んだ人に、このご飯を食べたならばこの世に帰ってはならないということを知らせる標示として、箸を立てるのだともいわれています。 これとは反対に、生死の境にある人の魂を食べ物の魅力で現世に引き戻そうとするためのものだという説もありますが、これは野辺送りのとき、喪主が墓場に持っていって置いてくる習慣があり、さらにこのご飯を鳥などがついばんで早くなくなるほうがよいともいわれていることと考えあわせると、この説は俗言のようにも思われます。 

ご参考までに・・・。