石屋のないしょ話

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水石・盆石

日本庭園に庭石が重要な存在になった後、室町時代には茶の湯の流行とともに、書院などの室内に手頃な大きさの石を置いて楽しむ愛石の趣味が盛んとなりました。

このような愛石の趣味は盆石と呼ばれ、江戸時代中期頃から文化人の間で流行し、多くの流派が生まれました。本来は一つの石だけを盆に据えて鑑賞するものだったのが、後には盆山・盆景・盆庭・盆画などと呼ばれる縮景の要素も含むようになり、丸盆などに大小の石を置き、砂をまいて波や雲などを表して苔や草木を植えたり、家の模型を置いたものまで現れました。

盆石の趣味は盆栽の一種とも考えられ、茶道のほか華道・山水画・書道などとも関係が深く、石を陶磁器の水盤に入れて水を注ぎ鑑賞することも行われました。江戸時代の末頃から盆石と同じような意味で用いられるようになった「水石」という言葉は、この水盤の石から出たといわれています。しかし盆石・水石などの言葉の用法に様々な説がありますので、ここでは語感的に好ましい「水石」を用いることにします。

水石の条件として、①自然石であり、加工はできる限りしないこと ②室内で鑑賞するので、大きさが適度であること ③一個で鑑賞し、二個以上の石の組み合わせでないこと などがあげられます。①~③の条件を満たした上で、形が良く、石質が適度に硬く(硬度6~7程度)、色が濃くて気品があり、自然らしさや風格がある水石は、さらに優れた水石とされています。

また、宝石のような価値は水石にはなく、宝石の原石は一般的に水石ではないとされています。