- 仏事Q&A
正月・五月・九月の縁日を特に盛大に行うのは何故ですか?
「正月・五月・九月」の三つの月は他の月とわけて「三斎月」あるいは「三長月」・「善月」とも呼ばれていますが、この三つの月の間は八斎戒を守って殺生をやめ、非行を謹んで過ごすことが昔から行われてきました。 『四分律行鈔』という書物によると、正月・五月・九月には、冥界にある人間の善悪の行為を映し出す「業鏡」が私たちの住んでいるこの南閻浮堤のありさまを照らし出して、そこに行われている良い事と悪い事の全ての行為をこの「業鏡」に映し出してみるのです。 したがって、この「業鏡」が私たちの方に向けられる正月・五月・九月には少しでも悪い事はしないように、またどんなに小さい事でも良い行いをして、「あの世(冥界)」に行った時に苦しまなくてすむようにしようというわけです。
中国の『百丈清規』という書物によると、隋の開皇三年(五八三年)からは皇帝の命で正・五・九および六斎日(八日・十四日・十五日・二十三日・二十九日・三十日)には祈祷道場を建てて祈り、殺生をしないようにというおふれを出しました。
このおふれでことに注目したいのは、官吏の移動をやめたということです。 それは移動するために大勢の人の往来ができて、どうしてもそこにご馳走をしなければなりません。 ご馳走を作るためには生き物を殺すことになるので、それを避けるために官吏の移動をやめたのです。 政治の行事についてもこの三斎月を守るという心がけがあったわけで、このことは現代の私たちも大いに見習わなければならないところです。 悪い事をしないというだけのことではなく、積極的に良い行いをしようという意識もあります。
また、正月は物事が生じ始める時であり、五月は最も盛んに興起している時で、九月はそれらの命が実を結ぶ時であるから、この正月・五月・九月があげられているともいわれています。 これらの事から、「正・五・九」の三つの月に、ことにお参りや祀りごと・祈願などが盛大に行われるのです。 また、こうしたお参りだけでなく、自らの生活を慎むということも同時に行われていました。 毎月「六斎日」という日があります。 八日・十四日・十五日・二十三日・二十九日・三十日の六日間で、この日には①殺生しない②与えられないものはとらない③非行(淫)をしない④嘘はつかない⑤酒をのまない⑥立派な寝床に寝ない⑦香水や身を飾るものをつけない⑧踊りや歌などを見に行ったり楽しんだりしない、という八つの戒め(八斎戒)をし、さらに夜食を食べないということを実行しました。
インドにおいて、古来からこの六斎日には鬼神が人を追って命をうばったり、病や悪い事をする悪日なので、この日は身を慎み、沐浴・断食をして過ごす風習が行われていましたが、この風習が仏教にも受け入れられて六斎日には八斎戒を守るようになったのです。
ご参考までに・・・。